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配偶者居住権とは?メリットとデメリットを解説

民法、特に相続法の改正により名が広まった「配偶者居住権」。昭和55年以来の改正ともあって、その活用が注目されていますが、もちろんメリットもあればデメリットもあるのが権利の性質です。

今回は、配偶者居住権におけるメリット・デメリットについて解説していきます。

配偶者居住権とは?

権利の概要

配偶者居住権とは、残された配偶者が、亡くなった人が所有していた自宅に、一定期間の間無償で居住することができる権利です。

居住用財産の価値を「所有権」「居住権」に分けることで、一定要件を満たす場合にその居住権のみを取得することで、評価額を押さえて居住を実現することができます。

これは、遺産分割によって居住用の自宅を失ってしまう、またはそのために大きな負担を強いられてしまう人のために設けられた制度です。
この背景には、少子高齢化や核家族化などの問題があるとされています。

権利の成立要件

配偶者居住権が成立するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

1.配偶者が、法律上の配偶者であること(内縁は不可)
2.配偶者が、亡くなった人が所有する建物に、亡くなったときに居住していたこと
3.遺産分割や遺贈などにより、配偶者居住権を取得するに至ったこと

この権利を活用する状況がある場合には、上記の条件をすべて満たしていることが殆どですので、あえて意識する必要は薄いと思われます。

とはいえ、他の相続人にかかわる問題ですから、相続が発生する前にあらかじめ押さえておくと良いでしょう。

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配偶者居住権のメリット

では、活用例を見てみましょう。

(事例)自宅2000万円、現預金1000万、合計3000万の遺産を、妻と子どもで分けるケース

法改正前の遺産分割例

法改正前では、法定相続分に則って遺産分割を行った場合、自宅不動産を相続する人にとって、負担が大きいものでした。

今回の事例のように、不動産の評価額が遺産総額の半分以上を占めている場合、現金を支払うことで代償分割せざるを得ないことになります。

その場合、あらかじめ現預金を確保しておくか、家を手放す(換価分割)を行うしか手段がなく、配偶者の負担が大きいという音大がありました。

配偶者居住権を利用した場合の遺産分割例

配偶者居住権を利用することによって、上記の問題を解決することができます。

自宅不動産の評価を所有権と居住権に分離することで、代償分割を行うことなく相続することができます

その上、現預金も相続することができますから、当面の生活費も確保することができます。

子にとっても、不動産の所有権を相続することができますから、決して不利になることはありません。

配偶者居住権のデメリット

いいことづくめに聞こえる配偶者居住権ですが、注意すべき点も少なくありません。以下、注意点を確認していきましょう。

1.権利を譲渡・売却できない

配偶者居住権は、特定の基準を満たした配偶者にのみ認められる権利です。そのため、この権利を第三者に譲渡したり、売却することはできません

この点について、居住権を利用する目的を鑑みると、心配する必要がないように思えるかもしれません。
しかし、老後というのは何が起こるかわからないもの。

認知能力が衰えてきた、身体能力に不安があるとの理由から老人ホーム等への入居を考えたとき、この配偶者居住権が足かせとなるのです。

入居費用を捻出するため、または使用しなくなるために売却をする場合、所有権は子などにあるため問題なく手続きを進めることができます。

しかし、実際には居住権は配偶者が持っているため、第三者が購入したとしても使用することができないのです(実務上、売却を断られる)。

配偶者本人が権利の放棄・消滅の手続をとることでこの問題は解決しますが、認知力が低下した状態では行うことができません

結果として、誰も居住のできない、売却もできない不動産がただ残り続けることになってしまいます。

2.土地には効力が及ばない

権利の性質上、その効力は不動産の土地には及びません。ですから、この土地の所有者の一存により、配偶者居住権が意味をなさなくなる可能性もあるのです。

例えば、自宅不動産の所有権を息子が、土地を娘が相続したケースを考えてみましょう。自宅不動産には居住権が付されていますから、配偶者である妻が住んでいます。

娘が、経済的な都合により土地を売却するに至った場合、第三者に土地の所有権が移ることになります。

その場合、土地の所有者の意向次第で自宅不動産を手放さなければいけないケースもでてきます。

その場合は、この権利が有効に活用できなくなってしまうのです。

3.配偶者が若い場合は活用しづらい

配偶者居住権の価値は、居住権の期間により決まります。
従って、その価値は相続時における配偶者の平均余命年数によって決定されるのです。

ですから、配偶者が若い場合は平均余命年数が長くなりますから、その価値が高くなり、結果として金銭的な負担が生じる可能性があります。

その分所有権の価値は相対的に低くなりますが、その建物の権利を包括的に得られるまで相当の時間がかかりますから、一概にメリットとは言えません。

配偶者が若い場合は、この点も考慮しましょう。


配偶者居住権は、まだその権利が認められてから日が浅く、法制度も複雑です。
民法に詳しくない一般の人が、インターネットや書籍で得た知識だけで活用するのは難しく、デメリットが生じてしまう可能性があります。

行政書士こそね事務所は、相続業務に特化した事務所です。
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