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借金などの負の遺産について

現時点でそれなりの額の借金を抱えている場合、または相続開始後に多額の借金が判明した場合、どうすればよいのでしょうか。
相続は「一切の権利義務」を承継するとあることから、いわゆる”肩代わり”をしなければならないのでしょうか。

今回は、そうした「負の遺産」についてご説明します。

借金は返済するのが原則

結論から申し上げると、被相続人(亡くなられた方)が借金を負っていた場合、相続した人は連帯して借金を返済しなければなりません。

※相続財産に該当するもの・しないものについての記事はこちら

なお、借金をはじめとした負の相続財産は、法定相続分の割合に応じて当然に相続されます。

ですから、遺産分割協議でこれと異なる決議をしたとしても、それを債権者に主張することはできません。
債権者は、遺産分割協議の内容によらず、法定相続分に応じ取り立てることができます

もちろん、債権者が分割協議の内容を認め、同意すればその限りではありませんが、同意するかどうかは債権者に委ねられることとなります。

借金を負わないために

借金を相続しないためには、以下の手立てが考えられます。

〇相続放棄

相続放棄をすることによって、借金を負わずに相続を終えることができます。
もちろん、口座預金や不動産といった一般的な財産も相続できないことになるため、借金額が相続額を上回る場合に選択されることとなります。

相続放棄における注意点は以下の通りです。

①生命保険も受け取れない可能性がある
生命保険の受取人が被相続人名義(亡くなられた方)である場合は、生命保険金が相続財産に含まれるため、受け取れないことになります。

②管理義務は残る
「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない(民法940条)」
従って、相続放棄をしても財産の管理義務が残ることに注意が必要です。相続財産の中に不動産が含まれる場合などは、この管理義務が原因としてトラブルになる可能性があります。

③家庭裁判所への申述が必要
相続放棄をするためには、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述しなければなりません。以下のような“事実上の相続放棄”では、不動産の名義変更や金融機関への手続には利用できますが、債権者には対抗できません

・相続分の放棄・譲渡をする旨の証明書
・事故の相続分を0とする旨の分割協議書
・特別受益証明書

④相続発生から3か月以内にしなければならない
厳密には「相続人が亡くなったことを知ってから3か月」となりますが、実務上、時間に余裕がないことがほとんどです。
というのも、相続放棄を選択するケースというのは財産構成が複雑な場合が多いからです。通常の相続財産と違い、借金のような債務はその存在が隠されていることも多く判明したときには期限を過ぎている、なんてことも。また、返済先が複数であることも少なくなく、財産調査に加えて作業が増えることから、円滑に相続手続きが進まない可能性も大きいです。

〇相続の限定承認

限定承認とは、相続によって得たプラスの財産の範囲内でのみ被相続人の債務(借金返済)の責任を負うことです。限定承認の活用が考えられるのは以下のケースです。

①相続財産に借金が含まれるかどうか、またはその額がわからない場合
②借金の額が相続額を上回っているが、相続したい財産がある場合

このように、様々な場面で利用することが期待される限定承認ですか、実際はあまり利用されていません。

限定承認のデメリット

  • 相続人全員の同意が必要
  • 手続きに手間がかかるため、専門家への依頼も比較的高い
  • 相続税の減税制度が適用されない
  • 譲渡所得税が発生する

早めの対応を

相続財産に多額の借金が含まれていることが分かった場合、早めに専門家に依頼するのが最善の手立てです。

もちろん、実際に相続が開始する前に終活や生前整理時点で借金額が相続財産を上回っていることが分かれば、事前に対策を講ずることができます。

相続が”争族”とならないために、早めの終活をお勧めします。


行政書士こそね事務所では、相談料のみで実践的な終活サポートを実施しております。お悩み事、わからないことがあればお気軽にお問い合わせください。